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アトピーの塗り薬と保湿剤の選び方・おすすめの使い方

肌の乾燥の原因は、バリア機能の低下!?

本来、私たちの皮膚には、水分の蒸発を防ぎ、体外からアレルゲンや細菌などの異物の侵入を防ぐバリア機能が備わっています。皮膚のバリア機能を担っているのは、下記の3つの要素です。

皮脂膜
皮脂腺から分泌される油分(皮脂)が、汗と混ざり合って皮膚の表面を覆い、水分の蒸発を防ぎます。

天然保湿因子(アミノ酸や尿素など)
角質にある細胞内で、水分を保持する働きがあります。

細胞間脂質(セラミドや脂肪酸など)
角質にある細胞と細胞をつなぎ合わせ、水分の蒸発を防ぎます。

皮膚の乾燥は、炎症によってこれらのバリア機能が壊れ、皮膚の内側から水分が蒸発してしまうことが原因です。

なぜ、アトピー治療に保湿剤が必要なの?

アトピー性皮膚炎を患い、皮膚で慢性的な炎症が起きると、皮膚のバリア機能が壊れて、皮膚は乾燥していきます。乾燥したドライスキン(乾燥肌)になると、異物であるアレルゲンや細菌が侵入しやすい状態になり、かゆみを伝達する神経の働きが過敏になります。そうなると、小さな刺激でもかゆみやアレルギーが引き起こされるようになり、かゆくなる→掻き壊す→バリア機能がさらに壊れる→さらにかゆくなる、という悪循環に陥っていきます。
壊れた皮膚のバリア機能をカバーするために必要なのが、保湿剤によるスキンケアです。保湿剤を使いスキンケアをすることによって、皮膚膜の働きを強化したり、保湿成分を補ったりすることで乾燥を予防し、アトピー肌や乾燥肌であっても、皮膚を正常な細胞の働きに近づけていくことができます。皮膚の外からアレルゲンの侵入を防ぎ、アレルギーを悪化させず予防していくこともできます。

保湿剤の種類と特徴 〜おもな3つのタイプ〜

一般的に、スキンケアで使う保湿剤には、軟膏、クリーム、ゲル(ジェル)の3タイプがあります。それぞれ特徴がありますので、ご自身の肌の状態や、使用感の好みで選んでいただくことになります。

【軟膏】
油成分がメインの軟膏には、ワセリンやプラスチベース、亜鉛華軟膏などがあり、エモリエントとして皮脂膜を強化する働きがあります。ワセリンは、鉱物油(石油)から作られますが、不純物を取り除く精製の度合いの順に、黄色ワセリン、白色ワセリン、プロペトがあります。また、白色ワセリンを紫外線によって反応しにくく加工したサンホワイトもあります。

【クリーム】
水と油を乳化した状態で、ヘパリン類似物質、尿素、セラミドなどの保湿成分を含み、モイスチャライザーとして使われます。
油と水の乳化の仕方によって、水ベースか油ベースに分けられます。水ベースは、みずみずしくさっぱりとした使用感があるのに対して、油ベースは、しっかりとした使用感で、水や汗をはじきます。水だけでは落ちにくく、エモリエントに近い働きがあります。

【ゲル(ジェル)】
水分をゲル状にしたもので、化粧水と同じように肌に水分を補給していきます。油分を含まないので、さっぱりと保湿することができますが、ジェルのベタベタ感でかゆくなったり、乾燥しやすいという欠点もあります。

ヘパリン類似物質を含んだ保湿剤の3つのタイプ

アトピー肌や乾燥肌の方は、皮膚科で保湿効果や血流促進作用があるヘパリン類似物質を勧められることが多いのではないでしょうか。中でも、ヘパリン類似物質を含むヒルドイドは、皮膚科で処方される保険適用の代表的な保湿剤です。形状はクリームのほか、ローション、フォーム(泡タイプ)も開発され、肌状態や用途に応じて使うことができます。ここでは、それぞれの特徴や違いを説明していきましょう。

◆クリームタイプ
クリームタイプには、油ベースのヒルドイドソフト軟膏と、水ベースのヒルドイドクリームがあります。軟膏は保湿が長持ちしやすいのに対して、水ベースのクリームは、サラッとした使用感で使いやすく、水で簡単に洗い流せます。

◆ローションタイプ
水ベースのクリームよりさらに多くの水分を含み、さっぱりと伸びが良いのが特徴です。乳液タイプ(半透明)のヒルドイドローションや、クリアタイプ(透明)のヘパリン類似物質ローションがあります。クリアタイプの方が、乳液タイプよりさらにサラッとした使用感です。

◆泡状タイプ・スプレータイプ
噴霧させて泡状で使うヒルドイドフォーム、ヘパリン類似物質外用泡状スプレーがあります。スプレーは、手が届かないところにも使うことができます。どちらもベタベタせず、よく伸びるのが特徴です。

保湿剤の「処方薬」「市販薬」「化粧品」の違い

保湿剤の分類には、保険適応される処方薬(医療用医薬品)、市販薬(一般医薬品やOTC医薬品)、それ以外の医薬部外品や化粧品があります。ここでは、これらの違いについて説明しましょう。

◆処方薬
医師の診断に基づいて処方される医薬品。一般的に薬効が強く、副作用が起きうるため、医師の指導のもとで使用する薬剤が指定されています。

◆市販薬
医師の処方箋がなくても購入できる医薬品。OTC医薬品(OTC=Over the Counter)ともいわれます。軽い症状や病気に適した市販薬があり、症状の改善や緩和に使い健康管理していくことができます。

◆医薬部外品
効能効果が期待できる有効成分が一定濃度に含まれた製品のことをいいます。化粧品は、作用が緩やかで肌の保湿や洗浄などの効果が期待できるものになります。

「処方薬」と同成分の「市販薬」もある!?

含有成分は同じでも、処方薬に分類されるものと、市販薬に分類されるものがあります。
例えば、エモリエントである白色ワセリンやプロペトは処方薬ですが、市販薬としても販売されています。一方で、サンホワイトは処方薬ではなく、市販薬としてのみ販売されています。
また、ヘパリン類似物質の代表的な製品であるヒルドイドは、処方薬に分類されていますが、類似商品として、ヘパリン類似物質を同程度含んだ市販薬もあります。
ただ、同じ成分を含んでいても、使用感が異なることもあります。
ドラッグストアなどで市販薬(OTC医薬品)や医薬部外品などを購入する際、どれを選んだらよいか迷ったら、店頭にいる薬剤師や登録販売者に相談し、ご自身の症状に合いそうな市販薬を勧めてもらうのもよいでしょう。

乾燥肌に有効なワセリン・プロペト

アトピー性皮膚炎の調子が悪かったり、肌の乾燥が強く、保湿クリームでは保湿が追いつかないときには、ワセリンやプロペトを使うとよいでしょう。鉱物油(石油)から作られるワセリンやプロペトは、皮脂膜の代わりとなり、皮膚の水分の蒸発を防ぐ働きが期待できます。特に、精製して不純物を取り除いたプロペトやサンホワイトと呼ばれる製品は、刺激が少なく、眼球や目の周囲、粘膜、傷にも塗ることができ、アレルギー反応も起きにくいのが特徴です。ドラッグストアなどで安価に入手が可能です。

ワセリン・プロペトの使い方のコツツ

ワセリンやプロペトの使い方には、コツがあります。スキンケアを行い保湿効果を高めるには、乾燥した皮膚に塗るのではなく、入浴やシャワーをして皮膚を洗った後、皮膚が濡れている状態で、水分とワセリンを馴染ませるように塗っていきます。こうすると、ワセリンが皮脂膜と同様に水分を閉じ込める働きをするため、保湿効果が出やすくなるのです。

ワセリンを塗った後、体に熱がこもる場合は、入浴やシャワーの際に温まり過ぎないように気をつけ、入浴後に体の熱を冷ましてからワセリンを塗るとよいでしょう。
肌の調子が整い、乾燥が改善してくると、ワセリンのベタベタ感が気になることがあります。その場合は、汚れてもよいタオルで拭き取ると、適度な保湿感になります。

それでもベタベタ感が気になるときは、保湿効果があり、ワセリンより油分の少ないモイスチャライザーに切り替えるとよいでしょう。また、皮膚が過敏な状態になっていると、ワセリンを塗ったあとに、ベタベタした刺激によって強いかゆみを感じることがあります。その際は使用を中止し、専門家に相談してください。

季節に合わせた保湿剤のしかた

皮膚の状態は、冬の乾燥や夏の湿気をはじめとする季節の移り変わりによる気温や湿度の変化に大きく影響を受けます。特にアトピー肌や乾燥肌は、バリア機能が壊れているため、湿度の多い日本の夏でさえ、ガサガサした乾燥状態になってしまいます。一方、アトピー性皮膚炎の症状が治まり、肌の調子が良くなると、乾燥した症状は治まり、冬でも乾燥しなくなります。

肌の状態と保湿剤が合っていないと、肌が乾燥してきたり、逆にニキビのような吹き出物ができることがあります。肌の調子に合わせてスキンケアを行い、保湿剤に含まれる水分や油分の量を調整していくと、肌の調子は落ち着いていきます。

季節の変わり目では、肌の状態を観察しながらスキンケアを行い、保湿のしかたも調整するとよいでしょう。

◆夏の保湿
ジメジメする夏は、冬と同じように保湿するとベタベタしてしまいます。そのため、油分の多いエモリエントは必要なく、モイスチャライザーだけでも十分に保湿ができるようになります。油ベースの保湿クリームでベタベタするときは、水ベースの保湿クリームにするか、乳液や保湿ローションにします。ジェルも、ベタベタやかゆみが気にならない人にとっては、夏におすすめできる保湿剤です。

◆冬の保湿
一般的には、冬は保湿をしっかりしないと乾燥が気になるようになります。モイスチャライザーで保湿をしても乾燥が気になる場合は、その上からエモリエントとなるワセリンやプロペト、スクワランや馬油などの強めの油分を組み合わせていきます。
乾燥がそこまでひどくない場合は、保湿の頻度は一日1、2回、洗顔後や入浴後だけで済みますが、乾燥がひどい場合、日中に乾燥が気になったら適宜、繰り返しスキンケアを行い、保湿してください。

当院のオリジナル保湿剤について

アトピー性皮膚炎によって皮膚で炎症が起きると、バリア機能が壊れ、肌の機能は低下し乾燥していきます。乾燥によるかゆみや、さらなる炎症を防ぐためには、スキンケアを行い、清潔な肌に保湿剤を塗って、壊れたバリア機能をカバーする必要があります。
とはいえ、アトピー肌や乾燥肌は敏感なため、保湿剤に含まれる水分や油分のバランスが合っていないと、症状は悪化し、かゆみや赤みが出ることがあります。成分が肌に合わない場合は、かぶれてしまうこともあります。また、肌の調子が悪いと、いくら保湿をしても保湿が追いつかず、乾燥が改善しないこともあります。いろいろ保湿を試しても肌の調子が改善されないと、保湿剤をつけるのがイヤになりますし、石鹸や洗浄剤が傷にしみてしまうので、入浴やシャワーを浴びて肌を洗うことさえも苦痛になります。
健康で丈夫な肌をもつ人にとっては「たかが保湿」ですが、アトピー性皮膚炎で悩んでいる人にとっては「されど保湿」。皮膚の症状や調子に合わせて、慎重に保湿剤を選びスキンケアを行なっていくことが大切なのです。

当クリニックでも、アトピー性皮膚炎を克服していくために、ていねいな洗浄と適切な保湿の大切さをお伝えしていますが、「自分に合った洗浄剤や保湿剤が見つからない」というお声をたくさんいただいてきました。こうした患者様の悩みを解決するために開発したのが、「保湿が好きになるスキンケアシリーズ」です。
試作の段階から、アトピー性皮膚炎で悩む患者様のご協力のもと、使用感などの感想を反映しながら試作を繰り返し、2012年に完成。2022年6月には、さらに使いやすくリニューアルしました。

アトピー肌に限らず、トラブル肌、敏感肌に悩む多くの患者様に使っていただき、「乾燥が改善された」「かゆみがおさまった」「季節によるトラブルが減った」など、喜びの声をいただいています。

こちらは、院長細野の研究機関である株式会社ホソノクリニカルラボで開発をしている商品です。詳細を検討されたい方は、こちらよりご確認ください。


住所:東京都中央区京橋1-6-11 カンケン京橋ビル2F
FAX:03-3563-0578
MAIL:info@hosono-clinic.com
診療科:皮膚科、内科、整形外科
院長:細野周作
<提携病院>
聖路加国際病院/東京医科歯科大学付属病院/虎ノ門病院/東京都済生会中央病院/井出デンタルクリニック/伊藤メディカルクリニック

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