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アトピーと入浴・温泉療法(湯治)

アトピー性皮膚炎(アトピー)でお悩み方にとって、入浴は非常に重要なスキンケアの一つです。適切な入浴習慣は、アトピー肌を清潔に保ちつつ、皮膚の血行を促進し、湯船に浸かることで心身のリラックス効果やストレス緩和も期待できます。しかし一方で、熱すぎるお湯や塩素、不適切な洗浄剤(ボディソープ)の使用が、アトピー肌の乾燥やかゆみを増すリスクにもなり得ることが大きな課題です。アトピー性皮膚炎で悩む方にとって、入浴は「諸刃の剣」ともいえるでしょう。

ここでは、アトピー肌に対する正しい入浴方法や入浴後のスキンケアをはじめ、かゆみ対策としての塩素除去や温度管理、洗浄剤(ボディソープ)の選び方、入浴剤の活用法などについて詳しく解説します。さらに、湯治(温泉療法)の活用ポイントや、岩盤浴・サウナ・よもぎ蒸しなどの民間療法の留意点についても説明します。

アトピー肌をやさしく守りつつ、毎日のスキンケアの一環として、快適に入浴していくためのヒントをまとめました。ぜひ、ご自身のアトピー肌の状態と照らし合わせながら、無理のない範囲でご活用ください。

アトピー肌の正しい入浴法

インターネット上には、「アトピーの人は肌を洗わない方が良い」、「保湿しない方が肌本来の力が戻る」など、いわゆる「脱洗浄と脱保湿」を推奨する意見があります。しかし、多くの皮膚科医や研究者は、アトピー肌にこそ正しい洗浄と適切な保湿が必要と考えています。汚れや汗を放置するとブドウ球菌などの細菌が繁殖し、掻き壊したところからアトピー肌の状態が悪くなり、痒みや湿疹がさらに悪化しやすいからです。そのため、アトピー肌を優しく洗浄し、十分に保湿することが必要ですが、洗浄と保湿には注意しないといけないことがあります。

まず、入浴で使う洗浄剤は低刺激のタイプを選ぶことが大切です。アミノ酸系やアルカリ度の高くない石けん素地など、比較的マイルドな成分のものをおすすめします。一方、合成界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム:SLSなど)がメインで使われているものや、強い香料・着色料を配合している製品は刺激になるケースが多く、アトピー肌には使わない方がよいでしょう。アトピー肌にできた掻き傷がしみてしまう場合は、洗浄剤の成分やpHが刺激となっていることが多く、アトピー肌に合ったものを使用するとしみなくなります。
洗い方についても、ナイロンタオルやブラシで肌を強くこするのは厳禁です。皮膚の角質層を傷め、アトピー肌の炎症を広げやすいため、しっかり泡立てて、手や柔らかいコットンタオルでやさしく洗うようにしましょう。

アトピー肌の入浴後のケア

アトピー肌は、入浴後は角質層が一時的に潤っていますが、肌のバリア機能が壊れているため、何もしないと急速に水分が蒸発して乾燥した状態になっています。そこで入浴後5分以内を目安に皮膚の水分を蒸発させないために、保湿剤を塗ることが重要です。保湿剤にはさまざまな種類がありますが、大まかに次のように使い分けると良いでしょう。

•ローション・化粧水・乳液タイプ

広範囲をさっと塗りやすく、軽度の乾燥や夏場に向いている。

•クリーム・軟膏タイプ

油分が多く保湿力が高い。冬場や乾燥が強い部位、かゆみのある場所にも重ね塗りしやすい。

•ワセリン・プロペト

皮膚表面に皮脂膜を作り、水分蒸発を抑えることができる。ただしベタつきやすいため、苦手な方は少量を薄く伸ばすとよいでしょう。


アトピー肌の調子が悪く乾燥が強い部位には、入浴後の5分以内、肌に水分が残りまだ潤いを保っているうちに保湿剤を塗るのがポイントです。また、化粧水やローションで十分に水分を補った後に、油分多めのクリームや軟膏、ワセリンなどを重ね塗りすると、より乾燥しにくくなります。また、掻き壊してしまう場合は、必要に応じてガーゼや包帯をあてて対応するのもよいでしょう。

アトピー肌のための適切な入浴

かゆみ対策

入浴で体が温まると、血行の促進とともに一時的にかゆみが強くなるケースが少なくありません。そのため、アトピーで悩む方は、入浴するとかゆくなり、肌を掻きこわしてしまうため、入浴が怖くなり、入浴しない、または入浴が嫌いなお子さんもいます。また、入浴したとしても、肌を洗わず、保湿しない(脱洗浄・脱保湿)のきっかけになっていました。さらに、就寝前の入浴で体温が上がると、寝つくまでの間に無意識にアトピー肌を掻いてしまうこともあります。これを防ぐには、寝る2時間前までに、38〜40℃程度のぬるま湯で10〜15分以内の短時間入浴にするのがよいでしょう。また、湯上がりにクールダウンを取り入れるのもおすすめです。保冷剤や冷たいタオルで肌を軽く冷やすと、かゆみの神経が鎮まりやすくなります。夏場は扇風機やエアコンを適度に使い、入浴後に必要以上に汗をかかないようにすることも大切です。

塩素への対策

水道水には、殺菌の観点から塩素による消毒が行われています。そして、お風呂に使うお湯に塩素が含まれていると、アトピー肌には刺激となり、かゆみを悪化させる要因になります。これを軽減するには、以下の方法が効果的です。

●塩素除去シャワーヘッド:活性炭、亜硫酸カルシウムなどを内蔵したカートリッジで塩素を大幅に減らします。体感的に「お湯が柔らかくなった」「かゆみが軽減した」という声が多いです。

●ビタミンC粉末を浴槽に入れる:1回の入浴に対して0.5〜1グラムほどのビタミンCを溶かすだけで塩素が中和され、コスト面も手軽な方法です。


なお、塩素対策と併せて、後述する「入浴温度を高くしすぎない」工夫も行えば、アトピー肌への刺激をより抑えられます。

温度管理

42℃以上の高温入浴や長湯は、アトピー肌にとってかゆみを悪化させる要因となります。熱すぎるお湯は、肌の最外側の皮脂膜を溶かし、角質層の保湿成分まで奪うため、入浴後にアトピー肌の乾燥やかゆみが強まりやすくなります。冬場でも熱すぎない38〜40℃程度のお湯に留め、入浴時間を短めにして、湯上がり後はしっかり保湿をするようにしましょう。

夏場は逆に汗をかきすぎると、発汗刺激でかゆみが増し、汗の成分が肌を刺激する場合もあるため、汗ばみやすい方は、汗をかいたらシャワーを浴びて汗を流すようにするか、少し低めの温度で手短に済ませるとよいでしょう。

洗浄剤の選び方と肌のpHバランス

健康な皮膚は弱酸性であるため、弱酸性の洗浄剤で肌を洗った方がいいと考えられています。ところが、アトピー肌の調子が悪くなると、肌のpHは弱アルカリに傾くことが知られています。そのため、調子が悪いアトピー肌を、弱酸性で洗浄剤やボディソープで肌を洗うと、pHの違いが刺激となり、傷にしみたり、かゆみの原因になることがあります。
洗浄剤の選び方のポイントは、まず合成界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム:SLSなど)がメインに含まれているものや、強い香料・着色料を多用する製品は避け、優しいアミノ酸系の洗浄剤にした方が良いでしょう。また、手軽に購入できる固形石けんを使う場合でも、アルカリ性が強いと肌がつっぱることがありますから、低刺激処方のものを選ぶと安心です。弱酸性の洗浄剤でしみてしまう場合は、中性か弱アルカリ寄りの洗浄剤を使用すると、傷にしみなくなります。最終的には、成分表示をよく確認し、自分の肌が実際にどう反応するかをよく見ながら調整していきましょう。

洗浄剤の選び方と肌のpHバラン

入浴剤とマグネシウムの活用

硫酸マグネシウム(エプソムソルト)

欧米では古くからエプソムソルト浴が家庭療法として知られています。エプソムソルトとは硫酸マグネシウムのことで、塩化ナトリウム(塩分)を含まないため、一般的な食塩を含んだ入浴剤より刺激を感じにくいというという声があります。また、マグネシウムイオンが肌のバリア機能を補助する可能性、血行促進やリラックス効果も期待され、入浴後に「肌がすべすべする」、「かゆみが落ち着く」と感じるという声も多数あります。1回の入浴で150〜200グラム程度を湯船に溶かし、10〜15分程度浸かるのが目安です。入浴後には必ず保湿ケアを行い、特にかゆみが出やすい部位は冷やすなどクールダウンなどを併用すると効果的です。

塩化マグネシウム

“にがり”に代表される塩化マグネシウムは、エプソムソルトである硫酸マグネシウムと同じように、保湿や血行促進による冷えに効果があるとされる一方、塩分を含むため、肌が荒れていたり傷がある部位にはしみやすいことがあります。マグネシウムオイル(マグネシウム水溶液のこと)も塩化マグネシウムを含んでいるため、ピリピリとした刺激が出ることがあります。塩化マグネシウムを入浴剤として試す場合は、使う量を控え濃度を薄くし、刺激を感じるようならすぐ湯から上がる、上がり湯でしっかり流す、など慎重に行いましょう。
マグネシウムを含んだ入浴剤は、アトピー肌でも使いやすいという利点があり、かゆみや血行改善へのアプローチ、リラックス効果など多面的なメリットが期待できます。個人差は大きいため、実際に試してみて、肌の反応をチェックしながら続けていくかを判断していくことが大切です。

季節ごとの入浴ポイント

夏場(汗をかきやすい時期)

•汗や皮脂をすばやく落とす
汗をかいたまま放置すると、汗そのものが刺激となり、また細菌が繁殖しやすくなり、かゆみや炎症を悪化させる原因になります。夏場はシャワーの回数を増やすなどして、清潔を保つことを意識しましょう。ただし、洗浄剤を使いすぎると乾燥を招くこともあるため、汗をかきやすい部位のみ石けんやボディソープを使うなど“部分洗い”も行うとよいでしょう。

•湯温はぬるめ(38〜39℃程度)
暑い時期に熱いお湯に入ると、体が火照ってかゆみが強まることがあります。ぬるめのお湯でサッと洗い流し、短時間で済ませると悪化を防ぎやすくなります。

•かいた汗はすぐ拭くor洗い流す
日中、外出や運動で汗をかいたら、こまめにタオルで押さえるように拭き取るか、可能であればシャワーを浴びるとよいでしょう。汗が残ると、かゆみの原因となります。

•クールダウンと保湿
入浴後は保冷剤や扇風機を使って短時間で熱を逃がし、かゆみが増さないよう工夫するとよいでしょう。発汗とともに、肌から水分が蒸発して乾燥しやすいので、夏でも保湿は忘れずに行いましょう。

冬場(空気が乾燥する時期)

•入浴温度はやや高めでも短時間
冬は冷えが気になるため、38〜40℃程度のぬるめでは寒いと感じる場合があります。40〜41℃くらいまで上げる方もいますが、その分、皮脂膜を奪いやすいので、入浴時間は10分以内を目安にして長湯は控えるのがおすすめです。

•保湿を重点的に
冬は空気が乾燥しており、アトピー肌は水分の蒸発が進みやすいため、入浴後すぐの保湿が特に重要になります。タオルで拭いた後に5分以内でローションやクリーム、軟膏やワセリンを重ね塗り、肌からうるおいが逃げないようにするとよいでしょう。

•お湯に浸かりすぎない
寒い時期は温まりたい気持ちが強くなりがちですが、長湯や熱いお湯は皮脂を大量に流し、かゆみを増幅させます。半身浴や短い入浴を複数回に分けるなど、体の温まりと肌バリア保護を両立できる方法を探してみましょう。

•加湿器などで室内湿度を保つ
冬の入浴後は室内も乾燥しがちなので、加湿器や濡れタオルを干すなどして、部屋の湿度を50〜60%ほどに保つと、入浴で得たうるおいを蒸発させにくくなります。

アトピー肌にとって入浴は、正しく行えば肌のバリア機能のサポートやリラックス効果を得られる一方、方法を誤れば乾燥やかゆみを悪化させるリスクが高まる「諸刃の剣」です。そこで、短時間のぬるま湯入浴や塩素除去による刺激の軽減、洗浄剤やボディソープ、入浴剤の選び方を工夫するだけで、心地よいお風呂タイムとなり、アトピー症状の緩和にもつながります。
また、自分のアトピー肌にあった正しい入浴習慣を見つけた上で、温泉療法(湯治)なども検討すると、泉質の効果やストレスケアが相乗し、アトピー症状が改善するという体験談も多く報告されています。こうしたアプローチはあくまで補助的なケアですので、症状が重い場合やアトピー症状が悪化している場合は、皮膚科医や専門家に相談しながら進めてください。自分のアトピー肌の状態に合った適切な入浴法を見つけ、アトピーケアの質を上げていきましょう。

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温泉療法(湯治)という選択肢

日常の入浴習慣を整えつつ、アトピー肌の補助的なケアとして、温泉や湯治(長期滞在型の温泉療法)を検討してみるのも一つの選択肢です。アトピーで悩む方の間では「豊富温泉(北海道)」「草津温泉(群馬)」「明礬温泉(大分)」などが知られており、体験談をきっかけに興味を持つ方もいます。温泉には、アトピー肌の保湿、ブドウ球菌など悪玉菌の殺菌、血行促進といった多様な作用があり、自分の肌に合う泉質や環境を見つけられれば、アトピー症状の緩和し、アトピー肌の調子を整えていく可能性があります。ただし、あくまで補助的な方法であり、過度に期待しすぎず、いくつかの注意点を理解したうえで活用することが大切です。

行くタイミングと医師への相談

温泉療法を試す際は、まず行くタイミングが重要になります。肌を掻きこわし浸出液が出る状態(じゅくじゅくした湿疹が強い)や、急性期のかゆみと炎症が激しい時期に、刺激の強い泉質に長時間浸かると、かえってアトピー肌が悪化するリスクがあります。入浴自体が苦痛なほどアトピー症状が強い時は、無理をしてもストレスが増すばかりなので、まずは辛い症状が治まり、できれば症状がやや落ち着いている時期を選ぶと安心でしょう。

あわせて、湯治を計画する際には皮膚科医や主治医に相談することをおすすめします。普段使用している外用薬(ステロイドや保湿剤)をどう使うか、温泉宿泊中に症状が悪化した場合どう対処するかなど、事前に方向性を決めておくと安心です。なかには湯治をすることで一時的に薬の量を減らせる方もいますが、逆に「初めは悪化したので、かえって薬が必要になった」というケースもありえます。医師と連携しつつ進めることで、より安全に温泉療法を取り入れやすくなります。

泉質や施設の選択

温泉は泉質によって特徴が大きく異なるため、アトピー肌に合うかどうかも個人差があります。いくつか代表的な泉質を見てみましょう。

•塩化物泉(食塩泉)
保温効果が高く、湯上がり後も肌を暖かく保ちやすいとされます。塩分が皮膚を保護して乾燥を防ぐ一方、傷や炎症がある部位にはしみやすいので注意が必要です。

•炭酸水素塩泉(重曹泉)
重炭酸成分が角質を柔らかくして肌をすべすべにする可能性があると言われています。比較的刺激が少なく、「美肌の湯」としても知られています。

•硫黄泉・酸性泉
殺菌力が高く、ブドウ球菌などの細菌由来の炎症には良い面がありますが、酸性度が高いと刺激が強い場合もあります。草津温泉や玉川温泉のようにpHが低い温泉ではピリピリ感が生じやすいので、アトピー肌の状態を見極め、短時間・部分浴から始めるなどの慎重に対応していくことも必要です。

•硫酸塩泉
マグネシウムやカルシウムを含み、刺激が比較的少なめで保湿効果も高いとされます。明礬温泉(大分)などが有名で、エプソムソルト(硫酸マグネシウム)と似た成分をもつ場合もあります。

いずれにしても、事前に温泉地の情報や口コミを調べて、ぬるめのお湯(加水可能な浴槽など)がある施設や清掃が行き届いている場所を選ぶと安心して入浴できるでしょう。長期滞在の場合は感染リスクや衛生状況も気になるので、周辺に医療機関があるか、源泉温度や浴槽温度が自分のアトピー肌に合いそうかなどもチェックしておくことをおすすめします。

湯治のコツ

湯治では「せっかく来たのだから」と1日に何度も温泉に入りたくなるものですが、やりすぎは逆効果になることがあります。特に、アトピー肌は、バリア機能が弱っているため、まずは1日2~3回、1回10~15分程度の短時間入浴から始めてみましょう。過度な長湯や回数過多は、肌の皮脂を奪いすぎ、かゆみだけでなく、のぼせや火照りを招く原因にもなります。

また、温泉成分で肌が柔らかくなる一方、長時間浸かれば浸かるほど皮脂は流れ出てしまうため、湯上がり後の保湿がとても大切です。入浴後5分以内にクリームやワセリンなどを塗布し、かゆみが出る場合はクールダウンして肌を冷やすことができるスペースも確保しておくと良いでしょう。湯治は温泉に入浴することだけでなく、普段の生活からくるストレスを減らし、睡眠や食事などのリズムを整えることにも意義があります。規則正しい寝起きや栄養バランスの良い食事により、自律神経と免疫バランスが安定し、アトピー症状の緩和を後押しする可能性は十分にあります。

初期反応への対応

温泉地に到着して最初の数日間は、アトピー肌が刺激に慣れず、一時的に赤みやかゆみが増す“初期反応”が起こることがあります。特に酸性泉や硫黄泉のように刺激の強い泉質では、肌がピリピリして赤みが増す場合があります。多くは数日で落ち着くため、「湯ただれ」と呼ばれつつ最終的には改善に向かうケースもありますが、もしアトピーの悪化がひどいと感じる場合は、入浴回数を減らし、一時的に中断して肌を休ませることが大切です。必要に応じて医師に連絡し、指示を仰ぎましょう。

まとめ

温泉療法(湯治)は、アトピーの補助的なケア方法として活用できる場合がありますが、誰にでも必ず効果があるわけではなく、合わない泉質や、入浴方法によっては逆にアトピー症状を悪化させるリスクもあります。大事なのは日常の入浴法を見直し、アトピー肌の状態を安定させ、余裕があれば検討すること、そして行く前に主治医へ相談しておくことです。温泉そのものの成分以外にも、休養やストレス解消、生活リズムの改善といった複合的な要素が、アトピー肌の調子に整えていく側面もありますので、焦らず無理のない範囲で行うことが大切です。

温泉療法は、アトピー症状を緩和する決して唯一の解決策ではありません。しかし、あくまで選択肢のひとつとして、うまくハマると、アトピー症状の緩和を後押しする可能性があります。自分の肌に合った湯温や入浴回数を把握し、慎重に進めながら、心と体全体をケアしバランスを整えていき、アトピーとうまく付き合っていきましょう。

温泉療法

岩盤浴、サウナ、よもぎ蒸しなど

岩盤浴・サウナ・よもぎ蒸しの注意点

アトピーで悩む方の中には、岩盤浴・サウナ・よもぎ蒸しなどでたくさん汗をかき、デトックス効果や血行促進を行うことでアトピーケアを考えている方います。確かに発汗自体は皮膚の血行や代謝を高め、リラックス効果をもたらす面もありますが、以下のようにいくつか注意すべき点があります。あくまでアトピーへの補助的なケアの一つとして位置づけ、自分のアトピー肌の状態や衛生面をしっかり意識して利用することが大切です。

岩盤浴

•室温は40~50℃程度で湿度が高いのが特徴です。高温多湿の環境は、アトピー肌や敏感肌には負担が大きいことがあります。皮膚が蒸れてかゆみが増し、思わず引っ掻いてしまうと炎症が進みかねません。

•利用する場合は、最初は数分程度を目安に試してみて、じんわり汗ばむ程度でとどめましょう。大量発汗を目指すような長時間利用は、アトピーが悪化するリスクが高くなることがあります。

•こまめに水分補給を行い、のぼせや脱水にならないよう注意してください。

•発汗後はすぐにシャワーなどで汗を流し、清潔なタオルで拭き取り、汗が肌に残らないようにしましょう。

サウナ

•サウナは高温(80~100℃程度)の環境に入るため、短時間でもかゆみを引き起こす可能性があります。ドライサウナは特に湿度が低く、肌がピリピリして乾燥が進むこともあるため要注意した方がいいでしょう。

•スチームサウナや低めのフィンランド式サウナなど、負担の少ないタイプを選ぶのも一つの方法です。最初は5~10分程度から慣らし、こまめな休憩や水分補給を徹底しましょう。

•サウナ後のシャワーや保湿を怠ると、汗や皮脂がかゆみを引き起こし、さらに細菌が繁殖する原因になり、アトピー悪化を引き起こす要因となりますので気をつけましょう。

よもぎ蒸し

•よもぎを煎じた蒸気を身体に当てる民間療法で、近年はエステサロンや自宅用セットなどで利用者が増えています。よもぎに含まれる成分が抗炎症と抗酸化に働くとされますが、医学的エビデンスはまだ限られています。

•ハーブ蒸気による発汗やリラックス効果を得られる一方、キク科アレルギーがある方にとっては逆に肌トラブルやアレルギー反応を起こす可能性があります。初めて試す場合は、温度を低めに設定し、短時間から様子を見ながら始めることが大切です。

•高温蒸気で皮膚がふやけすぎると、肌のバリア機能が低下し、ピリピリ感が出る場合もあります。痛みやかゆみが増すようなら途中で中止しましょう。

•サロンを利用する際は衛生管理(椅子やマント、蒸し器具の消毒など)をきちんと行っているか確認し、自宅で行う場合も器具やタオルの清潔を心がけてください。

不特定多数が利用する施設と感染リスク

温泉やサウナ、岩盤浴などの公共施設は、不特定多数が利用するため、水虫(白癬)やとびひなどの感染症リスクが高くなります。アトピー肌は、傷や炎症部位が多いほど肌のバリア機能が弱くなっているため、細菌や真菌に感染しやすくなるため注意が必要です。

●施設の清潔度: こまめな消毒や掃除が行き届いているか、口コミや公式情報で確認しましょう。

●タオルやシートは自分専用のものを使い、施設の貸しタオルを使わず、マイタオルや専用のシートを持参すると安心です。

●利用後はすぐにシャワーを浴びるようにしましょう。 発汗した肌を放置すると細菌が繁殖し、かゆみやアトピー悪化につながります。清潔なタオルで汗を拭き取りながら進めると理想的です。

●強い炎症や傷がある時は避けたほうが良いでしょう。 浸出液が出て、じゅくじゅくした掻き壊しがひどい場合はアトピー悪化リスクが高まるため、アトピー肌の状態が落ち着いてから検討しましょう。

あくまで補助的なケア

岩盤浴、サウナ・、よもぎ蒸しはいずれも温熱と発汗をメインにしたケア方法で、血行促進やストレス解消を通じて、アトピー肌の調子を整えていく可能性もあります。しかし、その反面で高温、蒸れ、発汗がかえってかゆみを増すリスクや、不特定多数が利用する公共施設で起こりうる感染リスクがあります。よもぎ蒸しに関しては、キク科アレルギーなど別の悪化の要因も考えられます。

もし試すのであれば、アトピー肌が落ち着いている時期に短時間から始めてみて、症状が悪化しないか様子を見ましょう。発汗後は汗や皮脂を速やかに洗い流し、保湿をしっかり行うことが大切です。アトピー症状が急激に悪化し、衛生状態に疑問を感じる施設での利用は避けるようにしてください。あくまでアトピーの補助的なケアとして、「やってみて合うようなら継続する」、「合わなければ途中でやめる」という柔軟な姿勢で向き合うのが良いでしょう。

まとめ

1. 日常入浴のポイント

• 洗いすぎない・こすりすぎない
ナイロンタオルや強い洗浄剤はバリア機能を壊しやすいため、低刺激の洗浄剤を選び、泡でやさしく洗う。

• 入浴後5分以内の保湿が大切
湯上がりの肌は一時的に潤っていても、放置すると急激に乾燥が進む。ローションやクリーム、軟膏などで素早く保湿を。

• 夏場は汗のケア、冬場は保湿強化
夏は汗を放置しないようこまめに洗い流す・拭き取る。冬は短時間入浴&保湿を念入りに行い、室内の湿度管理にも気を配る。

2. 湯治(温泉療法)の活用法

• 行くタイミングを慎重に選ぶ
急性期や湿疹がジュクジュクしている時期は刺激で悪化しやすい。症状がやや落ち着いた段階を狙うと良い。

• 泉質や施設をチェック
塩化物泉や炭酸水素塩泉、硫酸塩泉など、アトピーに合う可能性のある泉質は多様。自分の肌に合うかどうか、ぬる湯や清潔度も含め事前にリサーチする。

• 保湿と休養をセットで
湯治でも長湯や入りすぎは逆効果。短時間・適切な回数に留めつつ、湯上がり後は保湿を欠かさない。規則正しい生活やストレス緩和もあわせてアトピー症状をサポートする。

3. 岩盤浴・サウナ・よもぎ蒸しなど高温環境の注意点

• 過度な発汗はかえって刺激に
じんわり汗ばむ程度なら血行促進が期待できるが、大量発汗を目指すと乾燥やかゆみが増すリスクがある。

• 衛生面に配慮
不特定多数が利用する施設では、水虫やとびひなどの感染リスクが高まる。タオルの使い回しや清掃の状況を確認し、自分のタオルを持参するなど対策を。

• よもぎ蒸しはアレルギーにも注意
キク科アレルギーがある方は逆効果になりかねない。どの場合も、症状がひどい時は控え、短時間で様子を見ながら少しずつ慣らすと良い。

最後に

アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能が弱いため、「入浴が大切」とはいえ、方法やタイミングを誤ると悪化するリスクが高まります。日常の入浴では刺激を減らし、しっかり保湿を行うことが基本です。そのうえで、湯治(温泉療法)や岩盤浴・サウナ、よもぎ蒸しなどを、アトピー肌の補助的なケアとして慎重に取り入れと、アトピー肌の症状の安定やストレス緩和や生活の質の向上につながる可能性があります。どの方法も効果の出方には個人差があり、過剰な期待は禁物ですが、試してみる価値を感じたら医師のアドバイスを受けながら進めると安心です。自分の肌の声を聞きつつ、合わないと感じたらすぐに中止する勇気も忘れないようにしましょう。


住所:東京都中央区京橋1-6-11 カンケン京橋ビル2F
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診療科:皮膚科、内科、整形外科
院長:細野周作
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